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訪問介護報酬引き下げが決定:その影響と課題

2024年度の介護報酬改定で、訪問介護の基本報酬引き下げが正式に発表され、業界全体で大きな議論を呼んでいます。訪問介護の現場に携わる多くの方々からは、この決定に疑問や不満の声が上がっており、訪問介護事業の未来や、従事者の負担の増加に懸念が高まっています。この記事では、報酬引き下げの背景、現場の声、そしてこれからの課題について考えていきます。

訪問介護報酬引き下げの背景と現状

報酬引き下げの背景にあるもの

今回の報酬引き下げについて、厚生労働省は「基本報酬以外の処遇改善加算などを含めた総合的な支援策がある」としており、基本報酬自体は低減されるものの、加算措置によって現場への影響を軽減する狙いがあると説明しています。しかし、訪問介護の基本報酬が減額されることで、事業所の経営が圧迫され、結果として訪問介護を必要とする多くの高齢者が支援を受けられなくなるのではないか、という懸念が広がっています。

現場で聞かれる苦言と不安の声

日本介護福祉士会の会長である及川ゆりこ氏も「日々の業務に見合った適正な評価がされていない」と苦言を呈しており、この引き下げは訪問介護職員の士気を低下させる恐れがあると指摘しています。また、訪問介護職員の多くが「自分たちの働きが軽んじられている」と感じており、日々の業務で重要な役割を果たしている職員の意欲を削ぐような決定だという声も少なくありません。

訪問介護の現場に広がる課題

訪問介護の利益構造と現実

訪問介護は国の統計上「高い利益率」とされがちですが、実際には多くの事業所がギリギリの経営を強いられています。訪問介護事業所は少人数で設立できるため新規参入も多い一方で、経営スキルを持たない経営者が多く、収益を安定して確保できていないのが現状です。そのため、利益率の高さが報酬引き下げの理由にはならないという指摘がされています。

また、サービス付き高齢者向け住宅内で提供される訪問介護と、一般的な在宅訪問介護とでは経営構造も異なり、前者は移動の手間やコストが少なく高利益率ですが、後者は移動コストなどの負担が大きく、経営の安定が難しいという課題があります。この両者を一括りにして「利益率が高い」と判断されるのは問題であり、現場の実態を反映していないとの声も多く聞かれます。

訪問介護職員の高齢化と人材不足

訪問介護の現場では職員の高齢化が進んでおり、現在働く職員の平均年齢も上昇しています。これに加え、若年層の人材確保が難しいという問題もあり、業界全体で人材不足が顕著です。人手が足りない中で報酬が引き下げられれば、さらに介護職員の確保が困難になる可能性が高く、訪問介護サービス全体が維持できなくなる危険性も指摘されています。

訪問介護事業所が抱える経営上のリスク

経営スキル不足による倒産リスク

訪問介護事業所の多くは、介護経験の豊富な元ケアスタッフが設立したものです。現場のことは熟知していても、経営のノウハウを持たないまま運営を開始するケースが多く、長期的に安定した経営を続けるのは難しいのが現状です。また、介護業界特有の規制により、経営の自由度が限られているため、飲食業のようにメニューや価格の調整ができず、利益確保が難しいのが現実です。こうした経営面での難しさも、今回の報酬引き下げによってさらに浮き彫りになっています。

経営力を持つ大手の安定と中小事業者の苦境

資本力が豊富な大手事業所であれば、他の介護サービス(デイサービスやショートステイなど)からの収益で赤字を補填することが可能ですが、中小規模の訪問介護事業所にはその余裕がありません。特に、訪問介護は利益率が低いため、基本報酬の引き下げは経営に大きな打撃を与え、中小の事業所では倒産リスクが高まると予測されています。

報酬引き下げを受けた訪問介護業界の今後

SNS活用による人材確保の可能性

最近では、SNSを積極的に活用することで人材確保に成功している介護事業所もあります。SNSは、若い世代へのリーチが広く、訪問介護の仕事や魅力を発信する場として効果的です。SNSを上手に運用し、日々の業務内容や職員の働きがいを伝えることで、求人広告に頼ることなく人材を確保できる可能性があります。しかし、SNS運用には時間と人手がかかり、事業所全体での協力が不可欠であるため、安定的に運用できるかが課題です。

中小事業所の生き残りをかけた戦略

中小の訪問介護事業所が今後生き残るためには、まずは経営スキルの向上が必須となります。利益確保に向けたコスト管理や、人材育成に対する工夫が必要です。また、業界団体などを通じて他の事業所との情報共有や連携を強化し、経営面でのサポートを受けることも有効です。地域に密着したサービスを提供することで利用者や地域からの支持を得ることも、厳しい経営環境を乗り越えるための一つの手段となるでしょう。

訪問介護業界の持続可能な成長に向けて

訪問介護は、今後さらに高齢化が進む中で、地域で生活する高齢者にとって欠かせない存在です。報酬の引き下げが訪問介護の提供に与える影響は少なくなく、現場で働く職員や事業所の支援体制を充実させるためにも、業界全体でのサポートが重要です。次回の介護報酬改定では、訪問介護の現場の実態を踏まえた政策が求められるでしょう。

緩やかに下がっている介護職の離職率

介護業界は、少子高齢化の進展に伴い、需要が拡大している分野です。しかし、その一方で、介護職の離職率の高さが問題視されてきました。多くの人が「介護の仕事は厳しい」というイメージを持っており、そのために離職者が多いという印象を抱いているかもしれません。しかし、近年、介護職の離職率は徐々に下がり始めており、業界全体での改善努力が功を奏しています。この記事では、介護職の離職率の実態を他の職種と比較し、その改善点について詳しく解説していきます。

介護職の離職率とは?

介護職は、他の業種と比較して離職率が高いとされています。公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査」によれば、2022年度の介護職の離職率は約14.3%となっています。これは10年以上前のピーク時に比べるとかなり低い数字です。たとえば、2007年度の離職率は約21.6%と、非常に高い状態でしたが、それから徐々に改善されてきています。

介護職の離職率が高い背景には、給与や労働環境、人間関係などが関係していますが、近年ではこれらの要因に対する対策が進められ、少しずつ働きやすい環境が整備されてきていることがわかります。

他業種との離職率比較

介護職の離職率が高いと言われますが、実際には他の業種とどの程度の違いがあるのでしょうか。厚生労働省の「雇用動向調査」によると、全業種の平均離職率は12%程度です。この数字と介護職の14.3%を比較すると、介護職の方が少し高いことがわかりますが、大きな差があるわけではありません。さらに、2000年代半ばには、介護職の離職率が全業種よりもはるかに高い状況が続いていたことを考えると、ここ10年での改善は顕著です。

また、他の業種でも特に離職率が高い業界としては、飲食業や宿泊業が挙げられます。これらの業界では、介護業界よりもさらに高い20%以上の離職率を記録することも少なくありません。つまり、介護業界だけが特に厳しい環境というわけではなく、多くの労働集約型の業界で共通する課題が存在しているのです。

離職率改善の要因とは?

介護職の離職率が少しずつ下がってきた背景には、さまざまな改善策が影響しています。これから、具体的な取り組みとその成果について見ていきましょう。

1. 給与や待遇の改善

介護職の離職理由として最も多いもののひとつに「給与の低さ」が挙げられます。介護職は長時間労働や夜勤が求められることが多いにもかかわらず、給与が他業種に比べて低いというイメージが根強くありました。

これに対して、政府や業界団体は処遇改善加算などの制度を設け、介護職員の給与を引き上げる施策を進めてきました。この加算制度により、特定の資格や経験を持つ介護職員には給与が加算されるようになり、特に資格保有者やベテラン職員の待遇が改善されました。また、勤務年数やスキルに応じた昇給システムが整備され、職場でのキャリア形成が可能になったことも離職率の低下に寄与しています。

2. 勤務体制の見直し

介護職は、不規則な勤務時間が避けられない職業でもあります。早朝から深夜まで、シフト制で働くため、生活リズムが崩れやすく、体力的・精神的な負担が大きくなりがちです。特に、夜勤がある施設では、この負担が離職の一因となることが多いです。

これに対して、最近では日勤のみの勤務が可能な職場や、シフトを柔軟に調整できる制度を導入する施設が増えてきました。また、長時間の連続勤務を避け、休息時間を確保するための取り組みも進んでいます。こうした労働環境の改善が、離職率低下に貢献しているのです。

3. 職場の人間関係改善

介護職員が離職する理由のひとつに「人間関係の悪化」が挙げられます。介護の現場では、利用者やその家族、他のスタッフとのコミュニケーションが非常に重要です。しかし、スタッフ同士の連携がうまくいかない場合、ストレスが蓄積され、結果として離職につながることがありました。

この問題を解決するため、施設内のコミュニケーションを活性化させるための研修や、チームワークを強化するプログラムが導入されています。また、スタッフ同士の信頼関係を築くために、定期的なミーティングやリフレッシュのためのイベントを行う施設も増えています。これにより、職場内の人間関係が改善され、働きやすい環境が整ってきています。

4. スキルアップとキャリア形成の支援

介護職は、キャリアアップの機会が少ないと感じていた人も多い職業です。これが、モチベーションの低下や離職につながることもありました。そこで、近年では、介護職員のスキルアップやキャリア形成を支援する制度が充実してきました。

たとえば、介護福祉士やケアマネジャーなどの資格取得を支援するプログラムや、資格取得後の昇給制度が整備されています。また、介護職員としての経験を積んだ後、マネジメント職や教育担当としてキャリアを積む道も用意されています。これにより、自分の将来を見据えて働ける環境が整い、長期的な視点で仕事に取り組む職員が増えてきています。

介護職の離職率低下が示すもの

介護業界の離職率は、依然として他業種と比較するとやや高めですが、過去10年間で改善が進んでいることは確かです。給与や待遇の向上、勤務体制の柔軟化、職場内の人間関係の改善など、さまざまな取り組みが離職率の低下に貢献してきました。今後も、さらなる改善が進むことで、介護職がより魅力的で働きやすい職業となるでしょう。

これから介護職に就くことを検討している方や、現在の職場に不満を抱えている方は、業界全体の改善の動きを注視し、自分に合った職場を探すことが大切です。多くの選択肢が広がる中、より働きやすい環境での活躍が期待されています。

外国人介護士の現状とは

外国人介護士の現状とは?

介護業界は、人材不足が深刻な問題となっています。
社会全体の少子高齢化が進む中、日本国内で十分な数の介護スタッフを確保することは決して簡単なことではありません。

日本国内で確保できないなら、海外から介護スタッフ要員を迎えたら良いのでは?という期待によってスターとしたのが、外国人介護士です。
現在では、フィリピンやベトナム、インドネシアなど日本がFTA協定を結んでいる東南アジア諸国を中心に、外国人介護士候補を受け入れています。

しかし、ただ人数を確保すればよいというわけではありません。
外国人介護士と日本人との間にはたくさんの壁があり、なかなか目標通りに介護士候補を確保できていないという現状もあります。

どんな問題点がある?

外国人介護士に関する1つ目の問題点は、やはり言葉の壁です。
きめ細かなサービスが求められる介護においては、言葉の壁によってサービスの質が低下することが懸念されており、外国人介護士の確保に消極的な施設が少なくありません。

また、日本人からの反発もあります。
これは実際に経験した人のいるトラブルに基づいたケースで、文化的および歴史的な偏見によって、外国人介護士からサービスを受けたくないと反発する日本人はたくさんいます。

外国人介護士が対応する介護サービスの中には、家事援助などのサービスも含まれています。
文化や慣習が母国と大きく異なる日本において、家事援助をできるのかという不安はサービスを利用する家族側にもありますし、サービスを提供する外国人介護士側にもあります。
ただし、東南アジア諸国の中には、フィリピンのようにお年寄りを大切にする文化もあり、そうした国からやってくる外国人介護士は日本人よりもよく気が付くと高評価を得ています。

定着していくのか

外国人介護士を諸外国から受け入れた場合、介護士としてサービスを提供するための知識やスキルを身に着けた上で外国人介護士として認められます。
しかし、大変な経験をして外国人介護士になれても、さまざまな理由で母国へ帰国してしまうケースは少なくありません。
外国人介護士の受け入れを行っていなかった時期と比較すれば状況はやや改善していると言えますが、それでも十分に定借したとは言えませんし、介護業界の人材不足の状況も大きく改善されていません。

ただし日本で外国人介護士としての資格を得たのちには、日本に残って外国人介護士として働きたいという人も少なからずいます。
これからこの制度を定着させるためには、日本で働きたいという外国人介護士への待遇やサポート制度をより充実させる必要があるでしょう。

今後、日本を含めた世界各国ではこれまで以上にグローバル化が進むと考えられています。
外国へ進出する日本企業も多く、外国人介護士のニーズは日本国内だけでなく海外にも高まると考えられています。
そうしたニーズにも、日本は対応することが求められています。

介護福祉士はつらい仕事?

介護福祉士はどんな点が大変?

介護職の中では唯一の国家資格である介護福祉士のお仕事は、社会貢献度が高くてやりがいを感じられるお仕事です。
しかし実際に働いてみると、確かに大きなやりがいや充実感はあっても、それ以上に大変な仕事だと感じる人が少なくありません。

介護福祉士の仕事は、何が大変なのでしょうか?
1つ目には、待遇があまり良くないという点が挙げられます。
弁護士や医師のような他の国家資格と比較すると、給料や待遇面では決して良いとは言えません。
介護業界は全般的にお給料が低く、介護福祉士として働く場合でも初年度の年収は約280万円程度です。

2つ目は、介護業界では持っている資格よりも経験が重視される傾向があるという点です。
資格を持っている人よりも、実務経験が長い人がリーダーとして選ばれることが多いのです。

3つ目には、人間関係が難しいという点があります。
介護福祉士が働く施設では、ケアマネ―ジャーや看護師を始め、作業療法士や理学療法士、そして栄養士など様々な人が同じ職場で働いています。
それぞれ異なる立場で異なる価値観や意見を持ち入居者をサポートしているわけですが、必ずしも皆が同じ意見というわけではありません。
専門的な見解が違うことによる衝突もあり、人間関係のトラブルで悩むことが少なくありません。

4つ目には、体力的にキツイ仕事だという点が挙げられます。
介護福祉士のお仕事は、冷暖房がついたオフィスでデスクワークをするお仕事ではなく、入居者の介護に携わるお仕事です。
体力的にハードですし、24時間の中でシフト勤務となるため、その点でもツラいと感じる人は少なくありません。

悩みを解決する方法とは?

介護福祉士の悩みを解決するためには、目の前にある一つ一つのことを丁寧かつ真摯に対応することから始めなければいけません。
職場の人間関係トラブルならコミュニケーション不足が原因ということもあるため、普段からコミュニケーションを活性化することによってお互いに気持ちよく理解し合える職場環境を作ることができます。

また待遇に関しては転職するという方法もありますが、介護業界全体が低待遇なので転職してもあまり劇的な変化は期待できないかもしれません。
それよりも、より高度な資格を取得してキャリアアップを計画したほうが待遇アップという点では大きな効果が期待できます。

例えば介護福祉士として5年以上実務経験を積むと、ケアマネ―ジャーの資格取得が可能となります。
ケアマネ―ジャーとなればオフィスワークへの転職も可能となりますし、資格手当などによって給料アップも期待できるでしょう。
それ以外にも、ケアマネ―ジャーなら在宅介護を希望する人の介護認定に携わるなど、いろいろな働き方ができるため、将来ライフステージが変わった時にも対応しやすいというメリットがあります。

老老介護・認認介護の実態を知る

老老介護・認認介護とは?

社会の高齢化に伴って、老老介護・認認介護の問題が深刻化しています。
老老介護というのは、高齢者の介護を別の高齢者が行うというもので、65歳以上の高齢夫婦だけでなく、親子や兄弟などでも、どちらも高齢の場合に該当します。
認認介護に関しては、認知症を持つ高齢の患者の介護をするのが同じく高齢で認知症を患う家族というケースが該当します。

日本国内においては、全人口の約25%は65歳以上の高齢者です。
つまり、4人に1人は高齢者なのです。
医療の発達によってますます高齢化は進むと考えられており、今後はさらに老老介護・認認介護問題が深刻なものになると考えられています。

厳しい現状

老老介護・認認介護の現状は、かなり深刻です。
2001年には、65歳以上同士の介護は全体の40%、75歳以上同士では全体の18%程度でしたが、現在では65歳以上同士の介護は全体の55%、75歳以上同士でも全体の30%となっています。
そして、今後もこの割合は増えると予想されています。

老老介護・認認介護を行う介護者は、配偶者や子供など、同居している家族が全体の60%近くを占めています。
要介護者とは同居しない介護施設から介護を受けている割合は、全体の13%程度にとどまっています。
これは、高齢者の介護は同居する家族がするのが当然だと考える人が、日本においてはまだまだ多数いるという裏付けと言えます。

老老介護・認認介護の問題点は?

自分が高齢になって介護が必要になった時、介護施設のスタッフではなく、配偶者や子供などの身内に介護してもらえることは介護を受ける側にとっては精神的なメリットがあります。
しかし同時に、たくさんの問題点も浮上しています。
それは、介護する側の生活の基盤が著しく脅かされてしまうという点です。

核家族が一般的になっている昨今では、高齢の両親と離れて暮らす人は少なくありません。
親の介護をするとなると、仕事を辞めて生活の拠点も変わります。
頼れる人がそばにおらず、常に介護が必要な高齢者の介護を自分1人で背負い込むことは介護をする側の精神的ダメージが大きくなってしまいます。
また、仕事を辞めて介護に専念することによって収入が途絶え、生活が立ち行かなくなってしまうという問題点も増えています。

また精神的な面で問題はなくても、お互いが高齢者、そしてお互いが認知症を患っていると、遅かれ早かれ家事が困難いなったりお金の管理が難しくなってしまうリスクもあります。
こうした問題を解消するためには、家族だけで介護問題を解決しようとするのではなく自治体や社会全体がサポートする環境整備が必要不可欠です。
当事者、または当事者が身近にいる人の場合、様々な福祉のサポートをチェックしてみてください。

モンスタークレーマーの対応方法

理不尽なクレームとはどんなクレーム?

介護業界では、特別待遇を要求したり無理難題を押し付けてきたり、屁理屈や言いがかりをつけてくるモンスターカスタマーがたくさんいます。
実際に介護施設を利用している利用者がモンスターということもあれば、利用者の家族がモンスターというケースもあります。

こうしたモンスタークレーマーを放置してしまうと、介護施設全体のマイナスの影響が出てしまいますし、円滑な施設営業も妨害されてしまいます。
それに何よりも、対応しなければいけないスタッフが精神的にダメージを受けてしまいます。

そのため早期の対応が必要なのですが、介護施設の中にはそうしたモンスタークレーマーの要望を無視できないだけでなく、どこまで対応すればよいのかという線引きも定かではないためにその場しのぎの対応しかできないというケースが少なくありません。
具体的には、「食事には父が大好きなまんじゅうを必ずつけろ」と要求したり、介護施設内での事故に対して施設側が丁寧に説明したにもかかわらず昼夜を問わずに電話してクレームし続けるなど、理不尽な言動や態度が挙げられます。

どんな対応方法がある?

介護施設へ寄せられるクレームは、全てがモンスタークレームというわけではありません。
時にはスタッフにとって耳が痛くても、真摯に説明しなければいけないケースはあるでしょう。
しかしモンスタークレーマーの場合には、同じクレームを何度もリピートしてきたり、金銭を要求したり、すぐに責任者を出せと要求するなど理不尽であることが特徴です。

それに対する対応策としては、まず最初に事実確認をする事から始めましょう。
そのクレームがモンスタークレームなのか、それとも正当なクレームなのかを見極めるためには事実確認は必要不可欠なプロセスです。

そしてクレーム内容のうち、施設側に非がある部分とそうでない部分を把握しなければいけません。
利用者側からのクレームは全て介護施設の責任というわけではないので、クレームの中でどこに施設側の責任がるのかを見つけることによってより具体的な対応がしやすくなります。

もしも止まらないモンスタークレームのトラブルに悩んだら、会話を録音し、弁護士に相談するという対応方法も検討しましょう。
普段から施設の顧問弁護士へ相談できる窓口を設置しておくと、モンスタークレームに対しても早期に対応がしやすくなります。

損害賠償請求も可能

もしもモンスタークレームによる風評被害を受けたり、クレーマーが施設の事業にマイナスの影響を与える場合には、そのモンスタークレーマーに対して損害賠償請求をすることも可能です。
この場合、施設の責任者や現場のスタッフだけでの対応ではなく、顧問弁護士に対応を依頼する必要があります。

看護師のストレスの原因ベスト5

人間関係がストレスのトップに挙がる

看護師の仕事は全体で見ると、とてもやりがいがあり喜びを感じられる機会も多い仕事ですが、同時にストレスも抱えることが多くなります。
いろいろなストレスの要因となることがありますが、そのトップ5を見ることで、どのようにそれに対処していったら良いかを知ることができるでしょう。

まず、看護師が抱えるストレスの原因のトップ1は職場での人間関係です。
これには上司との関係や、同僚との軋轢などが含まれます。
命に関係する仕事をしていますので、お互いにレベルの高い要求をしなくてはなりませんし、体力的にも精神的にも追い詰められてしまう時もありますので、どうしても人との関係において余裕がなくなってしまうことが生じるのは事実です。

そのため、ある程度の人間関係の問題が生じえるということを前提に考えて、それに対処できる術を身に着けるようにしましょう。
ストレスを上手に発散できる場を自分の中で持っておくと、いろいろな問題が持ち上がった時にも、心の傷を受けずに済みます。

仕事の責任と量がプレッシャーとなることも多い

次にあげられるのは責任と量です。
看護師の仕事は、患者さんの健康と命を預かるという大変責任の重いものです。
特に、ちょっとした投薬ミスやケアのミスで、患者さんの命を奪ってしまうこともありますので、常に緊張が強いられる場となります。

また、病院で常にたくさんの患者さんをケアしなければなりませんし、急な体調不良や救急搬送などに対応しなくてはならないため、仕事の量はいつもパンパンという状況です。
そのため、自分で体力的にもバランスを取れる環境を選ぶことが重要です。
勤務シフトや看護師の配置状況などを調べて、重荷とならない病院を選ぶようにしましょう。

意外と給料が少なくプライベートの時間が取れないことが多い

さらに続くのが、収入面と時間面でのストレスです。
看護師は資格がないとできない独占業務ですし、仕事の量もハードさも、他の職種を上回るものがあります。
そのため、当然給料はしっかりともらいたいと誰しも思うものですが、実際には勤務の大変さに見合うものかと言われると、そこまでではないというのが現状です。
夜勤などの時間外勤務をこなしてある程度満足できる給料の額になり、普通の勤務ではなかなか思うような額にならないことが多いものです。

また、残業が多かったり、夜勤と日勤のミックス、定休の曜日が決まっていないなどの理由で、プライベートの時間が取れず、ワークバランスが崩れていると感じるのも、看護師にとって大きなストレスとなります。
こうした事態を改善するために、働きやすい環境を整えている病院を選ぶことや、いろいろな勤務体系で働ける場所を選ぶことは肝心です。
特に今では、派遣や時短勤務、日勤のみなど、いろいろな働き方が選べるようになっていますので、自分と家庭のための時間をしっかりと取れるようにしましょう。

終末期医療とエンド・オブ・ライフケアについて

終末期医療の考え方が変わってきている

医療の仕事に携わる人にとって、悲しくも避けて通れないのが患者さんの死という現実です。
どんなに医療が進歩しようとも、患者さんの寿命をある程度伸ばすことができるとしても死を避けることはできません。
特に日本では、高齢者の数が急速に増えていますので、看護師としても死に面することが増えてくることになります。

終末期医療については様々な考えがありますが、最近ではエンド・オブ・ライフケアという考えが次第に浸透してきています。
これは、死に向かう患者さんの心の整理をして、最後の期間の生活の質を高めるということに重点が置かれています。
従来のターミナルケアとは多少異なる概念も含まれていますので、看護師としてもこのエンド・オブ・ライフケアという考えをしっかりと意識する必要があります。

最後の時間を幸せに過ごせるようにサポートする

医療スタッフの一員であれば、どうしても終末期医療に注目せざるを得ません。
今までのターミナルケアでも、患者さんの痛みを取り除き最後の時間を有意義に過ごせるという考えが主軸となっていますが、それよりさらに患者さんの生活の質の向上という面に注目して、様々な観点から幸福な時間を過ごせるようにサポートするという姿勢を取ります。

医学的な技術を駆使して、できるだけ痛みを減らして病気による苦しみを取り除くことと共に、通常の生活を楽しんで過ごせるようにすることや、友人や家族との時間を大事に過ごせるように助けることがエンド・オブ・ライフケアでは重要な要素となってきます。
また、医療的ケアの手法について患者さん本人が選択できるようにして、本人の意思を尊重するというのも大事な考えとなっています。

本人の自己決定権を尊重することが重要

エンド・オブ・ライフケアでは、本人の自己決定権というのがとても重要になってきます。
そうすることで、最後の時間を自分の納得できるような仕方で過ごすことができるようになってきますし、死にしっかりと向き合うという姿勢を持つことができるからです。
特に、意識がなくなり本人が判断能力を失ってしまった時に、心肺蘇生を続けるかどうかなどの微妙な問題においても、しっかりと本人の意思を聞き取り、それを活かせるようにすることも大事なポイントです。

看護師にとっては考えさせられることも多い分野ですが、患者さんとそのご家族の幸せに貢献する大事なことですので、この分野に関する知識と判断力を培っておくのは大事なことです。
高齢化が進むにつれて、病院だけでなく、自宅で在宅医療を受けながら終末期医療をするというケースも増えてきていますので、訪問看護に携わる看護師は特にこの点に精通している必要があります。

潜在看護師って?看護業界への再就職事情

看護師の資格を持っている人はかなりの数に上る

日本国内では介護スタッフと共に看護師の人材不足が深刻な課題となりつつあります。
現在でも厳しい状況にありますが、これから団塊の世代が高齢者、後期高齢者となっていくにつれて、看護ができる人材はますます必要になっていきますので、看護師のニーズは非常に高いと言えるでしょう。
しかし、実際には看護師の資格を持っている人は少なからずいますし、以前看護師として働いていたキャリアを持つという人も多いのです。

ところが、看護師の資格を持って業務を行っていたとしても、様々な事情で職を離れてしまって、現在では看護師として働いていないという人が多く、それを潜在看護師と呼んでいます。
看護師不足が深刻化しているため、こうした潜在看護師が再び看護業界に戻ってきて、その資格とキャリアを生かしてくれるようにするというのが、日本の看護業界にはとても重要な課題となっているのです。

看護師をやめる理由とカムバックを阻む理由

どうして資格もキャリアも持っているのに潜在看護師となってしまう人が多いのかというのには理由があります。
まず、看護師は男女比で見ると女性の方が圧倒的に多いため、出産や育児のために看護師として働いていたとしても、職を離れてしまうことが多いのです。
特に、中堅どころとして経験を積み、高度な知識を学んできた年代でこのような状況になって看護師の仕事を離れるケースが多いので、現場にとっては大きな痛手となります。

そして、一度職を離れてしまうと、看護師としてカムバックするのが難しいと思わせるような状況もあります。
家庭を持ちながら、肉体的も精神的にもハードで、時間拘束が長い看護師の仕事をするのは実際問題とても大変で、仕事と家庭の両立が務まらないのではないかと心配する人が多いのです。
また、医療の現場は日に日に新しい技術や知識が出ているところですので、一度数年だけでも最前線から離れてしまうと、人の命に関わる責任の重い仕事をやり遂げられるかどうか不安に思うという事情もあります。

カムバックを支援する様々な取り組みをしている

こうした状況を見て、自治体や医療機関では、潜在看護師がカムバックしやすいような環境作りを推進しています。
たとえば、自治体によっては復職する人に助成金を出したり、医療機関に隣接した託児所や保育園などに子供を預けやすいようにしています。

さらに、家庭を持っていても働きやすいように、日勤だけの勤務体制にしたり、時短勤務、パートタイム雇用など、それぞれの事情に応じて働きやすいワークスタイルを選択できるようにもしています。
復帰してすぐに現場に就けるように、潜在看護師のための研修制度を設けているところもあります。

急性期医療とワークライフバランスについて

新人の看護師は急性期医療の現場に置かれることが多いのが現状

新人の看護師の割り当てられる現場は多くの場合、急性期医療の現場となっています。
この現場は様々な経験が積める場所ですし、業務内容もハードなことが多く体力が求められるため、若い新しい看護師が必要とされるというケースが多いからです。

急性期医療の現場は、入院して間もない患者さんで占められていますので、状態が不安定で急変などが起こりやすいところです。
また、症状が重い患者さんも多く集まっていますので、突発的な対応が必要になるケースも他の現場よりも格段に多い環境となっています。
そのため、残業や夜勤の必要性が非常に高く、看護師の身体的な負担が大きな職場となっています。

また、患者さんの死や難しい状況に直面することも多いので、看護師には精神的な負担も大きいところと言えるでしょう。
そのため、経験の浅い看護師にとっては様々な面でプレッシャーが大きい現場となっていて、看護師を離職してしまう原因となっているのも事実です。

ワークバランスを考えて働きやすい職場を作ることが課題になっている

このように、経験の浅い看護師が急性期医療の現場で頑張っていくのは楽ではありません。
しかし、病院全体の効率を考えれば重要なことですし、短期間でたくさんの患者さんと症例に立ち会える現場は、新しい看護師の経験を積み上げる機会ともなります。
そのため、単につらいというイメージが先行する現場ではなく、ワークバランスを考えて快適に働き続けられる環境とすることが重要なポイントです。

そこで多くの病院では、個々の負担を減らすために、いろいろな勤務形態の看護師をミックスさせて雇用しています。
夜勤専従の看護師チームを作ったり、派遣やパートタイムの看護師を用いて、一人一人が決まった時間で無理なく働けるようにしています。
自分の持ち場をはっきりとさせることで、精神的な負担を減らすこともできています。

プラス面を評価して働きやすい職場を作る

確かに急性期医療の現場は楽な職場とは言えませんが、経験の浅い看護師に実践を積ませるのにとても良い機会ですし、多くの患者さんに接して治っていく様子を近くで見られることで、看護師としてのやりがいとモチベーションを持てるというプラスの面もあります。
そのため、より働きやすい職場環境を作り、スキルの高い看護師を育成していくことが、医療機関にとって重要な課題となっています。

肉体的にも精神的にも大きな負担を抱え込まずに済むように、長期リフレッシュ休暇の制度を設けたり、病院内にカウンセラーを置いたりして、看護師みんながさわやかな気持ちで働き続けられるようにしています。