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緩やかに下がっている介護職の離職率

介護業界は、少子高齢化の進展に伴い、需要が拡大している分野です。しかし、その一方で、介護職の離職率の高さが問題視されてきました。多くの人が「介護の仕事は厳しい」というイメージを持っており、そのために離職者が多いという印象を抱いているかもしれません。しかし、近年、介護職の離職率は徐々に下がり始めており、業界全体での改善努力が功を奏しています。この記事では、介護職の離職率の実態を他の職種と比較し、その改善点について詳しく解説していきます。

介護職の離職率とは?

介護職は、他の業種と比較して離職率が高いとされています。公益財団法人介護労働安定センターの「介護労働実態調査」によれば、2022年度の介護職の離職率は約14.3%となっています。これは10年以上前のピーク時に比べるとかなり低い数字です。たとえば、2007年度の離職率は約21.6%と、非常に高い状態でしたが、それから徐々に改善されてきています。

介護職の離職率が高い背景には、給与や労働環境、人間関係などが関係していますが、近年ではこれらの要因に対する対策が進められ、少しずつ働きやすい環境が整備されてきていることがわかります。

他業種との離職率比較

介護職の離職率が高いと言われますが、実際には他の業種とどの程度の違いがあるのでしょうか。厚生労働省の「雇用動向調査」によると、全業種の平均離職率は12%程度です。この数字と介護職の14.3%を比較すると、介護職の方が少し高いことがわかりますが、大きな差があるわけではありません。さらに、2000年代半ばには、介護職の離職率が全業種よりもはるかに高い状況が続いていたことを考えると、ここ10年での改善は顕著です。

また、他の業種でも特に離職率が高い業界としては、飲食業や宿泊業が挙げられます。これらの業界では、介護業界よりもさらに高い20%以上の離職率を記録することも少なくありません。つまり、介護業界だけが特に厳しい環境というわけではなく、多くの労働集約型の業界で共通する課題が存在しているのです。

離職率改善の要因とは?

介護職の離職率が少しずつ下がってきた背景には、さまざまな改善策が影響しています。これから、具体的な取り組みとその成果について見ていきましょう。

1. 給与や待遇の改善

介護職の離職理由として最も多いもののひとつに「給与の低さ」が挙げられます。介護職は長時間労働や夜勤が求められることが多いにもかかわらず、給与が他業種に比べて低いというイメージが根強くありました。

これに対して、政府や業界団体は処遇改善加算などの制度を設け、介護職員の給与を引き上げる施策を進めてきました。この加算制度により、特定の資格や経験を持つ介護職員には給与が加算されるようになり、特に資格保有者やベテラン職員の待遇が改善されました。また、勤務年数やスキルに応じた昇給システムが整備され、職場でのキャリア形成が可能になったことも離職率の低下に寄与しています。

2. 勤務体制の見直し

介護職は、不規則な勤務時間が避けられない職業でもあります。早朝から深夜まで、シフト制で働くため、生活リズムが崩れやすく、体力的・精神的な負担が大きくなりがちです。特に、夜勤がある施設では、この負担が離職の一因となることが多いです。

これに対して、最近では日勤のみの勤務が可能な職場や、シフトを柔軟に調整できる制度を導入する施設が増えてきました。また、長時間の連続勤務を避け、休息時間を確保するための取り組みも進んでいます。こうした労働環境の改善が、離職率低下に貢献しているのです。

3. 職場の人間関係改善

介護職員が離職する理由のひとつに「人間関係の悪化」が挙げられます。介護の現場では、利用者やその家族、他のスタッフとのコミュニケーションが非常に重要です。しかし、スタッフ同士の連携がうまくいかない場合、ストレスが蓄積され、結果として離職につながることがありました。

この問題を解決するため、施設内のコミュニケーションを活性化させるための研修や、チームワークを強化するプログラムが導入されています。また、スタッフ同士の信頼関係を築くために、定期的なミーティングやリフレッシュのためのイベントを行う施設も増えています。これにより、職場内の人間関係が改善され、働きやすい環境が整ってきています。

4. スキルアップとキャリア形成の支援

介護職は、キャリアアップの機会が少ないと感じていた人も多い職業です。これが、モチベーションの低下や離職につながることもありました。そこで、近年では、介護職員のスキルアップやキャリア形成を支援する制度が充実してきました。

たとえば、介護福祉士やケアマネジャーなどの資格取得を支援するプログラムや、資格取得後の昇給制度が整備されています。また、介護職員としての経験を積んだ後、マネジメント職や教育担当としてキャリアを積む道も用意されています。これにより、自分の将来を見据えて働ける環境が整い、長期的な視点で仕事に取り組む職員が増えてきています。

介護職の離職率低下が示すもの

介護業界の離職率は、依然として他業種と比較するとやや高めですが、過去10年間で改善が進んでいることは確かです。給与や待遇の向上、勤務体制の柔軟化、職場内の人間関係の改善など、さまざまな取り組みが離職率の低下に貢献してきました。今後も、さらなる改善が進むことで、介護職がより魅力的で働きやすい職業となるでしょう。

これから介護職に就くことを検討している方や、現在の職場に不満を抱えている方は、業界全体の改善の動きを注視し、自分に合った職場を探すことが大切です。多くの選択肢が広がる中、より働きやすい環境での活躍が期待されています。