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IT業界はすでに3Kではない企業が増えている

2010年頃から3Kのイメージ脱却

IT業界は長時間労働を強いるブラック企業が多く、給料も安いといったイメージがあり、3Kだと嫌がる人は少なくありませんでした。
しかし、業界全体の取り組みによって2010年ごろから3Kが持つネガティブなイメージを脱却しており、現在では実際にIT業界で働くエンジニアの多くは世間が持っている3Kのイメージとは異なる見解を持っています。

休暇の取りやすさや職場の雰囲気に高い満足度

IT業界で働く人材に対してIPAが行った職場環境に関する満足度調査によると、多くの人は職場の雰囲気に対して高い満足度を持っているだけでなく、プライベートと仕事の両立がしやすいと感じていた李、休暇を取りやすいと評価する人が多くいることが分かりました。
特に若い世代の間では、休暇を取りやすいかどうかが企業に対する評価の分かれ目になることは多く、IT業界では比較的休暇を取りやすい企業が増えていることがこの調査で明らかになったわけです。
働くエンジニアの満足度が高いことは、業界全体の取り組みによる成果だともいえます。

しかし、職場環境改善の要因はそれだけではありません。
2010年頃からIT業界だけではなく日本社会全般的な景気低迷が続いており、IT業界でも案件減少による業務量が軽減が起こっています。
それが結果的に、エンジニア達にとっては働きやすい職場の整備につながったと考える見方もあります。

将来のキャリアに不安を持つ人は多い

従来と比較して、IT業界で働く人材の満足度が全体的に底上げされたことは、業界にとっても人材にとってもプラスと言えます。
しかしそうした中でも、将来のキャリア構築という点で不安を持つエンジニアは少なくありません。
現在の仕事には前向きに取り組んでいるけれど、将来のキャリアを考えると漠然とした不安に襲われると感じる人が多いのです。
満足度は上がっているのに不安が消えないという現象は、利益追求型の企業が社員に対してそれなりの待遇を準備しても、エンジニアたちの不安を完全に消すことはできませんし、エンジニアたちを幸せにすることもできないことを証明しているのかもしれません。

働く側が抱えるこうした不安は、IT業界で働くエンジニアだけでなく、多種多様な業界に携わる多くの人が同じような不安を抱えています。
社会の景気が悪く、全体的に先行きが見えない不透明な時代においては、こうした現象は決して珍しくありません。
そうした中でも自身のキャリアに対する将来的なビジョンを持つことは大切ですし、そのためのスキルアップやキャリアアップに果敢に取り組むことも必要な作業と言えるでしょう。
まずは従業員と企業との対話、そして長期的なキャリアラダーの作成から始めてはいかがでしょうか。

IT業界の健康問題

IT業界で健康問題が多い理由は「睡眠不足」が主な原因

近年、IT業界で働くエンジニアたちの健康問題が懸念されています。
特にメンタルヘルスの面では悪化しており、その原因には差し迫る納期へのストレスや過酷な労働環境などが挙げられます。
その中でも健康問題にマイナスの影響をもたらしている大きな原因の一つには、睡眠不足があります。

エンジニアが長時間の残業を強いられると、どうしても睡眠時間が削られて睡眠不足の状態に陥りやすくなってしまいます。
さらにストレスや不安、心配事などを抱えたまま眠りにつくことで睡眠の質が浅くなり、睡眠時間が短いことも手伝って十分な睡眠をとれないまま翌日を迎えなければいけません。
そうした日々が続くことによって、メンタルヘルスは少しずつ蝕まれてしまうのです。

多くのエンジニアは、仕事のない土日を使って睡眠負債を回収しようと寝だめをします。
それで回復できれば良いのですが、慢性的な睡眠不足に陥っている場合には週末に寝だめをしても回復しきれません。
それがさらに疲労やストレスを悪化させ、集中力の欠如から仕事の効率が低下したり、不眠症を併発するなどさらなる大きな問題が起こってしまいます。

エンジニアの睡眠不足に対する取り組みは、エンジニア個人だけの問題ではありません。
定期的に産業医を受診して健康問題が起こっていないかをチェックしたり、職場でもエンジニアのライフスタイルを客観的に考慮しながら適切な職務分担が必要不可欠です。
例えば、エンジニアにすでに睡眠不足の兆候が見られている場合には、時間外勤務は1カ月当たり20時間以内に抑えるだけでなく、土日の出勤や深夜勤などはNGとするのが賢明です。

その際には、通勤時間も考慮しなければいけません。
在社時間が同じなら、通勤時間が長い人は必然的に在宅時間が短くなり、結果として睡眠時間が削られてしまいやすいからです。

多重下請けの課題も解決も連動

エンジニアの健康問題に取り組むためには、多重下請けの課題に関しても並行して取り組むことが求められます。
なぜなら、エンジニアの長時間残業を引き起こしている原因の一つに多重下請け問題があるからです。
複数の案件を抱えながら並行して作業しなければいけないエンジニアは多く、余裕のない納期設定なども上乗せされ、エンジニアの健康状態にマイナスの影響を与えてしまいます。

IT業界に携わる企業は今後、社員が技術力やQOLを高く維持できる職場環境を整備することが求められています。
最新技術やオートメーションシステムを積極的に取り入れながら、できるだけエンジニアが効率的に作業に集中できる環境を整えることによって、健康問題も少しずつ改善されていくことでしょう。

SESはなぜやめとけと言われるのか?

SESが避けられる理由とは?

SES(エンジニアリングサービス)とは、IT業界におけるエンジニアの技術や労働力をクライアントへ提供する委託契約のことです。
具体的には、企業が抱えている技術者を一定期間クライアント先へ常駐させる、という派遣形態です。
プログラマーやテスターなどをはじめ、SEや開発エンジニアなどが対象となりますが、中にはプロジェクトマネージャーやネットワークエンジニアなどがSESとなるケースもあります。

IT業界には多種多様な働き方がありますが、その中でもSESはやめておいた方が良いという人が少なくありません。
その理由は、下流工程の業務がメインとなり、長く携わってもキャリア構築につながるスキルアップが望めないという点、そして長時間労働を強いるブラック企業が多い傾向にあるという点、また労働時間や作業量に対して給料が少ないといったものが挙げられます。

確かにすでにエンジニアとして働いた経験がある人にとっては、あえてSESへ転職する必要はないかもしれません。
しかし、未経験の状態からエンジニアを目指す人にとっては、SESになるべきなのか、それとも避けるべきなのか迷ってしまう人は多いでしょう。

未経験の人がエンジニアとして働く場合、やはりベテランと肩を並べて即戦力となることは容易ではありません。
そのためスキルが低い状態だと、資料作成を任されたりアプリのテストと言った簡単な下流工程に携わる機会が多く、やりがいとか充実感の高い業務に関わることはなかなかありません。
特に企業に勤めているSESだと、そうした傾向が強いのです。
やりがいが低くてキャリアアップにつながらないと言われるのは、そうした背景が考えられます。

すべてのSESが悪いわけではない、むしろおすすめ?

SESがおすすめなのか、それとも避けたほうが良いのかという点は、自身の現在のエンジニアとしてのレベルによって大きく変わります。
すでに経験豊かなエンジニアなら、SESとして企業に勤めなくても別の働き方でスキルアップができるでしょう。
しかし未経験のエンジニアにとっては、SESとして企業で働くことにはたくさんのメリットが期待できます。

例えばSESは下流工程の作業に多く携わるため、下流工程のプロセスやITスキルを学べますし経験も積めます。
地道にスキルを医学ことによって将来的には転職しやすくなりますし、フリーランスとして独立することもできるでしょう。
また未経験の状態からエンジニアへ転職する際には、即戦力とならない人材はなかなか転職先が見つかりづらいものです。
しかしSESなら、他の職種と比較して未経験OKの求人が多いため、転職しやすいという点もメリットの一つと言えます。

下請法を理解しておこう

知らなかったでは済まされない法律「下請法」

働き方改革によって、個人でも企業から案件を受注できたり、下請けとして働ける機会が拡大しました。
そこで知っておきたいのが、下請法です。
案件を発注する企業側も、また受注する下請け型にとっても、下請法は「知りませんでした」では済まされない法律です。

例えば、受注した案件を納品し、顧客から「追加でこの機能も付けてください」という依頼があったとしましょう。
最初の契約で約束していた機能ではなく追加なのですから、常識的に考えれば追加機能には追加で料金が発生することになります。
しかし、料金は払いたくない、無償でつけなければ納品として認めないし契約金も払わないというトラブルが起こることは少なくありません。
これはすべて、下請法を理解していないことが原因で起こるトラブルなのです。

下請法とは

下請法とは、一言で言うなら下請け業者の利益を守るための法律です。
案件を発注する企業と受注する下請け企業とでは、どうしても不公平なパワーバランスが生じてしまうことが少なくありません。
それを法律によって禁止して、下請け企業の利益と権利を保護しようというのが下請法の目的です。

下請法によって定義される下請け企業は、企業でなければいけないというルールはなく、案件を受注する個人も対象となります。
ただし、案件を発注する側と受注する側とでは、資本金の面でいくつかの条件があり、条件を満たす場合にのみこの下請法が適用されます。

具体的には、案件を発注する親企業の資本金が3億円超の場合には、下請法が適用される下請け企業は資本金3億円以下の企業および個人、が対象となります。
親企業の資本金が1千万円以上3億円以下の場合には、下請け企業の資本金は1千万円以下なら下請法が適用されます。

起こり得るトラブルとは?

下請法では、下請け企業を保護するために、いくつかのルールが決められています。
これは、案件を発注する側と受注する側とで起こりやすいトラブルを反映しています。

親企業と下請け企業とで起こりやすい1つ目のトラブルには、契約書トラブルがあります。
なかなか契約書を出してくれなかったり、契約書がないのに作業だけをせかすというトラブルは以前から起こりやすいものでした。

2つ目のトラブルは、上記したような仕様変更や追加に対して無償での対応を要求するというトラブルがあります。
無償で対応しなければ納品を認めないと脅迫するケースも、少なくありません。

3つ目のトラブルは、支払い遅延です。
代金をなかなか払ってくれないというトラブルは以前から多いですし、現在でも決して珍しいトラブルではありません。
下請法では、納品日から60日以内に代金を全額支払わなければいけないと定められています。

日本にユニコーン企業が少ない理由とは

ユニコーン企業とは?

ユニコーンといえば、額から角が生えていて、馬なのに羽が生えていて大空を羽ばたける幻の生物をイメージする人が多いでしょう。
ユニコーン企業というのは、ユニコーンのように企業としてとても稀な存在であり、今後大きく飛躍する可能性を秘めた企業のことを指します。
2013年にベンチャーキャピタリストによって発案された造語です。

企業の多くは、どれもベンチャー企業やスタートアップ企業としてスタートします。
その中でも希少な成長性が期待できる企業や、底知れぬ将来性を感じさせてくれる企業などがユニコーン企業と呼ばれています。

現在では、ユニコーン企業に分類されるための条件がいくつかあります。
それは、「評価額が10億ドル以上であること」「創業10年以内であること」「未上場であること」です。
特に業界や分野による条件付けはありませんが、多くの場合には高いレベルの技術を有するテクノロジー関連事業です。

ユニコーン企業は、世界中にあります。
その多くはアメリカと中国で、2020年においてはアメリカにおけるユニコーン企業は228社、中国では122社でした。
一方の日本では、ユニコーン企業の条件に見合う企業はわずか3社のみ、2021年でも10社のみと数少ない状況にあります。

日本にユニコーン企業が少ない理由

日本にユニコーン企業が少ない理由には、どんな点が考えられるのでしょうか。
まず考えられることは、起業家そのものの数が少ないという点が挙げられます。
安定志向が強い日本においては、多くの若者は大企業や有名企業への就職を希望します。
自分でアイデアを形にして起業したいという人は残念ながらそれほど多くありませんし、起業したいと言えば周囲から反対されることが多いでしょう。

また、人材育成や資金調達の面でも、日本はハードルが高い傾向があります。
若い起業家が少ないため、後に続く起業家を育成する土壌が整備されていませんし、資金調達においても未上場の企業にとっては大手企業と比較してハードルが高いという現状があります。
また投資家の投資額を見ても、日本においてはアメリカや中国と比較して、ベンチャーキャピタルへの投資額が少ないという現状があります。
そのため未上場の企業にとっては、資金を調達するためには投資家を探すよりも、株式市場への上場を狙ったほうがベターなのです。

日本政府は、2023年前でに最低でも20社のユニコーン企業を創造することを目標として掲げています。
この目標を実現するためには、社会風土を改善して失敗を恐れない風土づくりに努めることが必要不可欠と言えます。
またグローバル社会で戦える企業を創造するためには、イノベーションを起こせる人材を開発したり、投資機会や投資規模の拡大についても改善が必要です。

評価の低いITエンジニア

待遇がよくならないのはなぜ?

時代の流れとともにITエンジニアのニーズは高まり続けていますが、日本においてはニーズに反してITエンジニアの待遇が良くないという問題が起こっています。
ITエンジニアが「キツイ」「帰れない」と呼ばれる新3Kの職種として選ばれているのも、そうした待遇の悪さが理由です。

確かにどんな仕事でも、忙しければキツイと感じるでしょうし、多忙を極めて帰れないこともあります。
しかしそうした状況はたまに起こるだけで、毎日がそうした状況が続くわけではありません。
しかしITエンジニアの場合には、社会のIT化に伴ってニーズが高まり続けていることに加えて、市場競争によってIT企業は安い金額で案件を受注することが多いため、忙しすぎて帰れない状況が慢性的に継続している実情があります。

本来なら、企業は適切な見積もりを出して顧客へ請求し、顧客からの要求にこたえられなければNOと言えば良いだけです。
しかし、顧客にNOというのは無礼極まりないと考えるビジネス文化が根底にあるため、無理な案件を受注してそのしわ寄せがすべてITエンジニアにのしかかってくるのです。
ITエンジニアは、企業の中では一つの歯車にすぎません。
忙しすぎて無理だとITエンジニアが訴えても、「顧客にNOなんて言えるはずがない」と上司から叱責されてしまうでしょう。

待遇がよくなければ転職を考えるべし

ITエンジニアの待遇が良くなるためには、社会全体が変わらなければいけませんし、企業と顧客が対等な関係になることが必要不可欠です。
しかしこれまで長い年月をかけて築かれてきた日本のビジネス文化を、今すぐにITエンジニアのために変えろと言ってもなかなか実現することは難しいものです。

働く環境が変わらないのなら、ITエンジニアにはどんな選択肢があるのでしょうか?
答えは簡単で、転職をしてもっと環境が良い場所でITエンジニアとして働けばよいのです。
スキルや経験を生かして転職することは、ITエンジニアにとっては決して悪い選択肢ではありません。

2019年には働き方改革が始まり、従業員の残業時間に上限が設けられました。
全ての企業でこうしたルールに沿うまでには、やはりそれなりの時間がかかるでしょう。
しかし制度としてITエンジニアを含めた働き方が見直されるということは、ITエンジニアにとっては決してマイナスのことではありません。
少しずつでも確実に、これからはITエンジニアの待遇が改善されることが期待されます。

またITエンジニアは、上司やっ客に対して自分の意見をきちんと述べることも、自分を取り巻く環境の改善につながります。
こうしたITプロジェクト案件においては、営業が顧客との窓口となり、現場で働くITエンジニアの意見や状況を理解しないまま顧客と商談を進めてしまうケースが少なくありません。
ITエンジニアは、自分が置かれている状況をしっかりと他の部署や顧客へ伝えることによって、状況を改善できる可能性があります。

みずほ銀行勘定系システム統合によるトラブル

トラブルの歴史は?

みずほ銀行では、1980年代に構築した勘定系システムの老朽化に伴い、2000年に入ってから新しいシステムの構築や統合を大規模なプロジェクトとして始めました。
しかしこのプロジェクトは予想に反してトラブル続きで、2019年に完成するまでなんと19年もの長い歳月がかかってしまいました。

みずほ銀行が旧富士銀行や旧第一勧業銀行、旧日本興業銀行と統合する際に、各金融機関のシステムをリレーコンピューターという仕組みによってつなごうとしました。
しかし大きく失敗してしまい、2002年には大規模なシステム障害が発生しました。
さらに2011年には東日本大震災による義援金の振り込み処理に失敗し、再び大規模なシステム障害が起こりました。
こうしたシステム障害が起こるたびに、みずほ銀行のATMは使えなくなり、ユーザーにとっては不便を感じる機会が頻繁に起こってしまったのです。

投じられた予算はいくら?

みずほ銀行が19年間かけてようやく完成したこのシステム統合プロジェクトには、巨額の予算が投じられました。
当初の計画をはるかに超える規模の予算を必要とし、銀行業界のシステム開発プロジェクトとしてかけた費用はなんと4000億円以上にもなります。
あまりの巨額の予算がかかってしまったプロジェクトを揶揄して、内部からは「まるでIT業界のサグラダファミリア」というニックネームがつけられたほどです。

どうして起こったのか

みずほ銀行が経験したこの大規模なプロジェクトは、そもそもどうして起こったのでしょうか。
もともと銀行は、リテール業務と呼ばれる預金と融資によって利益を上げてきました。
しかし時代の流れとともに、企業の資金調達が銀行からの融資ではなく、株主や債券発行に移行したことによって、銀行のリテール業務は徐々に薄れてしまいました。

みずほ銀行がリレーコンピュータによってつなごうとしたプロジェクトをスタートしたことは、まだ銀行のリテール業務が活発だった時期です。
しかし次第にリテール業務の重要度が下がり、同時にこの勘定系システムの刷新や投資に対するモチベーションも下がってしまいました。
これが、このプロジェクトがなかなか先へ進まなかった要因の一つだと考えられます。

更にみずほ銀行の経営統合では、どの銀行のシステムを採用して刷新と統合を行うかという点でもなかなか上手く先へ進まなかったといういきさつがあります。
そして、時代の流れとともに当初の刷新統合に関する全容を把握している人材がいなくなり、誰も手が付けられない状態となってしまったのです。

銀行の金融システムのトラブルが発生すると、システムエンジニアの責任だと考える人は少なくありません。
しかし、このみずほ銀行の刷新統合システムプロジェクトにおいては、明らかにシステムエンジニアではなく経営の失敗によるものだと考えられます。

世界と比較した日本IT業界の実態

日本のIT企業と国際的な企業との比較

日本にはたくさんのIT企業がありますが、世界にも多くの会社があります。
その中には国内だけでなく、グローバルに事業展開している企業もたくさんあります。
日本のIT企業にも各国で事業を展開する企業はありますが、まだ世界の企業に比べると少ない印象があります。

ただ、日本のITエンジニアは海外の技術者と比べても、スキルや能力に引けを取りません。
そのため世界に比べると、日本のエンジニアは不利な立場に置かれていると考えられることもあります。

給料を比べてみると、日本は大きく遅れをとっている

世界と日本のIT企業を比較する上で良い指標になるのが給料です。
世界と日本を比べてみると、国内のエンジニアは世界に比べて給料に大きな差があります。

全世界を見てみると、最も高収入なITエンジニアは主にアメリカで活躍しています。
アメリカは広大な土地がありますが、特にサンフランシスコのエンジニアは世界の中で最も給料が高くなっています。
なんと年収で約1,500万円ほどを得ているエンジニアも多く、平均的に高収入であることが分かります。
これに次いで年収が高いのはシアトルで、約1,400万円です。

さらにこれに続くのがニューヨーク、ロサンゼルス、ボストンで、約1,300万円となっています。
この次に続くのはサンディエゴで、約1,270万円となっています。
そしてさらにこの次にデンバーが続き、こちらも1,260万円ほどです。
8番目まで下がっても、ワシントンの約1,250万円と高給与を得ているエンジニアが多くいます。

こうしたアメリカの収入と日本のITエンジニアを比べると、日本の平均年収はなんと600万円ほどとなっています。
アメリカの各地域のエンジニアに比べると、日本のエンジニアがいかに収入が低いかが分かります。
また、上の平均年収はシステムエンジニアの場合で、プログラマーに関しては平均年収が400万円ほどまで下がります。

日本と世界のエンジニアでは給料に大きな差があり、これが日本のIT業界の成長を遅らせている原因であるとも言えるでしょう。
しかしすぐに国内のIT企業が給料を大幅に上げることは難しく、しばらくはこの状況が続くと予想されます。

エンジニアに対する捉え方の差も大きな問題

日本とアメリカでは、ITエンジニアの捉え方にも大きな違いがあります。
日本ではITエンジニアを単純労働として考える風潮があります。
特にシステムエンジニアなどは単純なプログラミング作業が多く、確かに作業的な側面が大きな職業と言えます。

これに対してアメリカはITエンジニアが大きなステータスと捉えられており、サービスやプロダクトをクリエイティブに考える職業と見なされています。
この捉え方の差が大きな収入の差に繋がっており、日本とアメリカの技術の違いにもなっています。

前述のように、アメリカと日本でエンジニアのスキルにはそこまで大きな差がありません。
しかし仕事への取り組み方、考え方の違いにより、非常に大きな差が生まれているのです。

国による取り組み

IT業界へのさまざまな取り組みを、国が主導で行っている

IT業界の過剰労働に対して、現在国が主導となりさまざまな施策が行われています。
「働き方改革」と言う言葉の通り、働きやすい環境作りは行われているものの企業によってはあまり進んでいなかったり、自主的に進める気がない企業も珍しくありません。
そのため、国が主導してIT業界の職場環境の改善に乗り出しているのです。
こうした国の取り組みにより、業界内の労働状態は少しずつ改善されており、現在も継続されています。

働きやすい環境になることで従業員1人1人のパフォーマンスが上がり、さらなる業績アップが期待できます。
また働き方の効率が上がることにより、エンジニアのスキルアップにもつながるはずです。

長時間労働への、国の対応

国がIT業界に対して行った取り組みとして、「長時間労働への対応」が挙げられます。
長時間労働はIT業界の長年の課題となっており、「いつも終電で帰る」「終電がないからタクシーで帰る」という状況の人も少なくありません。

こうした労働環境がずっと変わらずそのまま放置されていたため、国は労働時間の是正に乗り出しました。
具体的には、各企業が抱えている問題を抽出しその問題をフェーズごとで捉えるようにしました。
そしてその問題に含まれている背景を理解し、最適な解決策を考え出すという方法です。

こうした取り組みにより問題も少しずつ減っており、働きやすい環境の企業が増えてきています。
現状でもまだ残業の多い職場はあるものの、以前より状況は確かに改善されつつあります。

また、国は「過剰労働に関するチェックリスト」を用意しています。
社内の労働環境が悪化しているのではないかと感じるときは、このリストを確認すると良いでしょう。
リストは厚生労働省のページで無料で閲覧することが可能となっています。

自社診断ツールを確認しよう

さらに国は「自社診断ツール」というものを提供しています。
これは「IT企業の社内における、長時間労働への取り組み状況を可視化できるツール」です。
社内にある部署別、またはプロジェクト別にチェックできるため、活用するのをおすすめします。

このツールはこれから何かを取り組み始めようと思っている中小企業や、大企業の中で部署ごとの状況やプロジェクトの進捗を確認・比較したい場合に便利です。
さらに業界内での自社の立ち位置の確認をしたい場合にも、便利なツールとなっています。

診断結果は見やすさが工夫されており、マネージャー職についている人であればプロジェクト進捗の判断をスムーズにするために役立てることができます。
また経営者であれば、結果をもとに社内全体を改革するのに役立ちます。

価値が高騰している?ITエンジニア

優秀なエンジニアは価格が高騰している

ITエンジニアは最近給料が下がっているものの、スキルの高い人材は価格が高騰しているのが現状です。
簡単なプログラミングや作業的な仕事をこなせる人材はたくさんいますが、クリエイティブな仕事ができる人や、プロジェクトを任せられる人材は非常に限られています。
そのためこうした人材は各IT企業で取り合いになっており、高い年収となっています。

特に最近のIT業界は非常に成長スピードが速く、追いついていくのは大変です。
常に時代の先端のスキルを身に付けているエンジニアは、それだけで貴重な人材と言えるのです。

大手IT企業は、積極的に人材獲得に動いている

こうした人材不足の流れの中で、大手IT企業は人材獲得に積極的です。
転職サイトなどでは求人が常に募集されており、優秀な人材はすぐに声がかかるようになっています。
また、条件や待遇も非常に良く、エンジニアは仕事を選べる状態です。

さらに最近は、ヘッドハンターによる人材獲得の機会も増えています。
ヘッドハンターとは、「優秀な人材を、企業に紹介する人」のことを指します。

高い経験や実力を持つエンジニアは、ヘッドハンターの中で情報が流れています。
こうした情報にアクセスして、ヘッドハンターは大手IT企業の案件をエンジニアに紹介しているのです。

ヘッドハンターから提案される求人は、転職サイトなどで紹介されている求人と内容が大きく異なります。
年収1,000万円を超える案件も珍しくなく、それほど能力の高いエンジニアが求められているという現状が理解できます。

これから需要が伸びることが予想されるエンジニア

これからIT業界を目指す場合、需要が伸びるエンジニアを目指すと良いでしょう。
その例の1つとして、「IoTエンジニア」が挙げられます。

IoTとは「Internet of Things」の略で、生活のさまざまなものがインターネットに繋がることを指しています。
この分野はまだまだ開発途上で、新たな製品やサービスが今後も登場することが予想されています。
そのためエンジニアが不足しており、大きなプロジェクトを経験した人や専門性の高い技術を持っている人は多くの企業から歓迎されるでしょう。

もう1つお勧めの分野として、「AIエンジニア」が挙げられます。
人工知能であるAIは、最近非常に注目されています。
より高性能なAIを作るためのエンジニアは常に募集されており、これから検討するのも良いでしょう。

ここで挙げた2つの分野以外にも、VRやARなど、成長が見込まれる分野はたくさんあります。
すでにある分野でプログラマーなどになるのも良いですが、新たな分野のほうが時代に合ったスキルを身に付けることができ、高収入も期待できるはずです。